品性を守り冷静に食せ

 近所のスーパーでは300円ほどのにぎり寿司を売っている。これがなかなかのものなのでよく利用するのだが、今日買いに行ってみたところ、売り場にはいつものにぎり寿司やちらし寿司は一つもなく、かわりに太い巻き寿司があふれていた。
 節分に「恵方」なる方角を向いて太巻き寿司に無言でかぶりつくというような習慣は、ごく一部の地域に伝わるものとしては承知していた。フジテレビで「アイ・アイゲーム」という番組を放送していた頃、その番組の中で進行役の山城新伍が話していたのを聞いたのが最初だから、もう30年近く前のことだ。
 しかし、このような風習は、果たして全国民的な認知を得たものと言えるのだろうか。巻き寿司を売って稼ぎたいという業者の思惑に、軽薄なメディアが乗っただけのことだと苦々しく思っているのは私だけではないはずだ。
 大昔から「伝統」として守っている人々には申し訳ないが、太巻き寿司を切りもせずにむしゃむしゃと食べ続けるなどという下品なことは、私はたとえ強制されたとしても絶対にしたくない。このようなまねをして、高齢の方々や小さな子どもたちが思わぬ悲劇に巻き込まれないことを、ただただ願うばかりである。