安芸門徒のヨーグルト

 近所のスーパーで「チチヤスヨーグルト」を見つけた。東京ではあまり見かけないので、ちょっとうれしくて手を伸ばしてみた。パッケージに描かれているキャラクターは「チー坊」という名前だそうだ。ひっくり返すと後ろ姿になっていて、なんだか可愛いぞ。
 明治の頃、真宗の教えに目覚め聞法を勧めようと考えた広島の人々が「闡教社(せんきょうしゃ)」という講を組織し、その資金を得るために作った乳業会社がチチヤスの起こりである。この会社は、大正時代に日本で初めてヨーグルトを製品化したことでも知られている。
 バブルの頃に本業以外に手を拡げ業績が悪化してしまったと聞いたが、曲折の末に「チチヤス」の名は守られた。かつては、社内にお内仏を安置し、社員が揃って聞法していたとも聞くが、経営体が替わってしまった現在はどうなっているのだろう。懐かしい味のヨーグルトを口に運びながら、そんなことを考えた。