歌が上手い?いや、疑うまい。

 国立の授業のあと、夕方は番町で家庭教師。帰りにクルマのラジオから「千の風になって」で有名になったAの歌が流れてきて、泣きそうになった。むかし塚田三喜夫が歌っていた「五月のバラ*1」を生で熱唱していたのだが、あれでは歌がかわいそうすぎる。
 歌の専門家ではないからうまく説明できないし、その道の人々からは叱られるようなことを書いてしまうかもしれないが、あえてここに記そう。Aの発声は不自然で苦しそうだし、音の取り方も乱暴で丁寧に音を置いていくことができず、結果として叩きつけるような歌いぶりになってしまう。さらにビブラートは音が伸び切らず、声がうわずった状態で中途半端に終わり、おまけに見事なまでに鼻濁音が出ない。
 一昨年の暮れ、久しぶりにチャンネルを合わせた「紅白歌合戦」で初めて彼を見たとき、よほど体調が悪いのか、そうでなければふざけているのだと思った。彼の「千の風になって」で癒されたという人々がいると聞くが、あの歌を聴いて何がどのように癒されるのか不思議でならない。
 歌が上手いというのはどういうことなのか、このところ真剣に悩んでいる。親子で歌手を名乗っている2人のM、ムード歌謡を歌っていた芸人のK、そしてこのA。この人たちは本当に歌が上手いのか。

*1:またの名を「想い出のバラ」。作詞:なかにし礼、作曲:川口真。