将来の夢

 大幅に予定を変更し、睡眠不足を解消する。今日の約束はキャンセルし、次の予定も決められぬまま。
 よくわからないのだけれど、建築家として「かっこいい」お父さんの「将来の夢」がプラチナカードを持つことってのは「かっこいい」ものなのかしら。消費生活に「夢」を置くというのもどうかと思うし、それくらいの「夢」ならばあっという間にかなってしまうだろうという気もしてしまう。
 大学時代、助教授が研究室に届いた郵便物を整理しているところに居合わせたことがある。カード会社から届いた入会案内を開封しないまま「このDというのはどんな会社なのですか」と私に聞くものだから、その会社の発行するクレジットカードは日本で最も古いブランドであり、発行の条件も厳しくなかなか持てないものだということを説明した。すると、助教授は「そうですか。くだらないものがあるのですね」と言って、その封筒をゴミ箱に放り投げてしまった。私は「もったない」とも思ったが、少し「かっこいい」とも感じた。
 その後の私は、ゴールドカードを持つことがうれしくて仕方のなかった時期もあったけれど、結局は今のような状態に落ち着いてしまった。あの日の研究室での出来事を思い出すとき、私が何を「かっこいい」と思うのかがわかるような気がする。そうすると私の「将来の夢」というのがどのあたりに置かれているのかも自覚できるように感じるのである。