春の会務(前)

 この季節の会務は、会員台帳の登録内容を更新することである。データベースソフトで管理している会員台帳から登録事項を「名簿原票」として刷り出して会員に送り、確認のうえ変更点や修正点を伝えてもらうのだ。電子メールでも返信できる旨を案内しているが、そちらはピークを過ぎ、今は全国から封筒が届いている。
 この仕事をしていてまず思うのは、紙を折ること1つを取ってみても、人それぞれ実にさまざまだということだ。名簿原票はA4判で角形2号の封筒に折らずに入れて送るのだが、長形3号の封筒に事務局の所在地を刷って同封し、返信の際にはこれを利用してもらう。この封筒に名簿原票を入れるにはどうしても折らなければならないのだが、その折り方が本当にさまざまなのだ。
 いちばん多いのは3つに折る人だが、4つに折る人も少なからずいる。そのほか、いちど2つに折ってから封筒のサイズに合わせるように(結果として3つに折ったのと同じサイズになるように)折る人も複数いるし、パタパタと巻くように(結果として4つに折ったのと同じサイズになるように)折る人も1人いて、その「流儀」の多様性はなんとも興味深い。
 この人とは事務仕事を一緒にしたくないと思うのは、紙の折り方が曲がっている人だ。紙を折ることに人柄が出るとまでは言うつもりもないけれど、どうせ折るならきちんとしてみたらよいのではないかとも思う。
 その昔、職場を移るに際して大学の卒業証明書が必要になったとき、まだインクも朱肉も乾かないうちに、しかもずいぶん適当に折って送って来た「事務官」がいて、これを新しい職場に提出するときに、ひどく申し訳ない思いがしたことを思い出すのだ。もっとも、その事務室も同じ「官職」の人たちで占められていたから、何の問題もなかったのだけれど。
 会務という名の事務的なやりとりではあるが、こころが優しさや温かさの方向に動くときもある。名簿原票の最下部には小さな通信欄があるが、そこに短信を添えてくださるのを読むのはうれしいものだ。一筆箋でメッセージを同封してくださる方など、こちらが申し訳なくなってしまう。仕事が仕事でなくなる瞬間である。