名前のこと(2)

 3月5日、大劇場では月組が千秋楽を迎えた。主演男役として最後の大劇場の舞台に立った霧矢大夢は、終演後のあいさつをこのように始めている。

 大きな夢と書いて「ひろむ」という名前は、ふらりと立ち寄った本屋さんで見つけた赤ちゃんの名付け本の中から「何となく宝塚らしいな」と思い選んだ名前でございます。

 苦労の多かったはずの日々を明るく締めくくる、サービス精神にあふれた彼女らしいあいさつだと思った。ミュージカル『エドワード8世:王冠を賭けた恋』とブリリアントステージ『Misty Station:霧の終着駅』が東上の際には、私も2階の後ろの方から最後の80期生を見送りたい。
 今日は、同じものを異なった視点から見ることの面白さを感じた。そこには当然のように共通の前提というものが担保されているのだが、そのことがまた心地よくもあった。