朝美納豆

 最近、朝のラジオは文化放送で「吉田照美ソコダイジナトコ」と決めている。木曜日のコメンテーターは詩人のアーサー・ビナードさんだが、この人のことばには心の動かされることが多い。今日は、TPPの「本当の意味」は「ただのペテンパートナーシップ」だと言っていた。また、バスに乗り遅れるなという議論に対し、そのバスがどこへ向かっているのかが問題という主旨の発言も。
 ことばに対する研ぎ澄まされた感性がこの人の魅力であり、この人の世情に対する見識も大いに信頼できるものである。この人が詩人会議の特別会友であることを考えるとき、その第二代運営委員長を務めた黒田三郎が、自らが歴史の主体者であることの自覚を堂々と語った詩編のあったことが想起される。
 アメリカ出身のアーサー・ビナードが日本語で「母国」と口にするとき、うっすらと悲しみのにおいのするような気がする。黒田は「歴史をふまえた市民的詩人」といういくらか手垢のついたことばで評されているけれど、そのにおいのうちには黒田が抱えて生き抜いたものとどこか通じたものが存在するように思えてならない。