しあわせの実相

 前にも同じようなことを書いているから*1、どうも些細なことに「しあわせ」を感じるとこの詩を思い出すことになっているようだ。

 しあわせ
           高田敏子


 歩きはじめたばかりの坊やは
 歩くことで しあわせ


 歌を覚えたての子どもは
 うたうことで しあわせ


 ミシンを習いたての娘は
 ミシンをまわすだけでしあわせ


 そんな身近なしあわせを
 忘れがちなおとなたち
 でも 心の傷を
 なおしてくれるのは
 これら 小さな
 小さな しあわせ

 初出は1962年の『月曜日の詩集』だそうだが、どうやってこの詩と出遇ったかとなると記憶がない。中学校の頃だったとは思うのだが。この詩には大中恩さんが曲をつけていらっしゃるとのことなので、一度聴いてみたい。
 高田敏子さんの合唱曲というと、三善晃さんが作曲された合唱組曲「嫁ぐ娘に」が有名だろうか。この曲を高田さんが出られた女学校の「後輩」たちが歌うのを聴いた覚えがある。30年も前のことなのに、昨日のことのように思い出す。
 高田さんがにお浄土に還られたのは、私が教員となった年の私の誕生日であったことを今日知った。私が詩からもっとも遠く離れていた頃のことだ。なんとも申し訳ない思いで合掌する。

*1:http://d.hatena.ne.jp/riverson/20080609/1213014240