13年ぶり3回目

 ゆっくり起きて身支度。新大阪の宿をあとに梅田に向かい、そこからマルーンの電車に乗る。電車は北へ、そして西へ。
 花のみちを通って大劇場に向かう。ここは劇場という名のアミューズメント・パークである。その施設の中で「公演定食」という名の食事をとり、いくつもの売店を冷やかし、資料の展示を見る。開演までの2時間などあっと言う間だ。大劇場の公演は、雪組の『ドン・カルロス』と『Shining Rhythm!』。晴華みどりさんのいない雪組の何を見ればよいのかちょっと迷うけれど、めったに来ない大劇場なので2階の1列目を奮発した。
 最近の雪組は芝居に恵まれないというのが率直な感想。ひとつひとつのシーンには見どころもあるけれど、構成が平面的で紙芝居を見ているような気分になってしまった。何のためにセリがあり盆があり銀橋があるのか。あれほどの舞台装置に恵まれているのだから、あの空間でしか実現できないものを見せてもらいたいと思う。もちろん、作者が独自の装置を用いて意欲的に取り組んだことは理解する。しかし、問題は装置だけではない。物語の運び方がいかにも説明的に過ぎはしないか。芝居が芝居である以上、求められるものは破綻のない物語であることだけではないはずだ。
 一方のショーは実に見事。中村一徳の作品は好き嫌いが真っ二つに分かれると聞いたが、個人的には断然支持する。男役も娘役も、それぞれに見せ場を持っており、色づかいの美しさもあってグッと引き込まれた。ロケットも黒燕尾での群舞も、たいへんな充実ぶりだった。エトワールは、これが初めてという透水さらさ。発声も音程も満点の出来映えで、雪組娘役の「歌うま」の系譜に連なるひとりとなった。
 中村が雪組に作品を提供するのは13年ぶりとのこと。ショーとしては1997年の『レ・シェルバン』、翌1998年の『ラヴィール』以来ということになる。思えば『レ・シェルバン』は「理事」の主演お披露目で、娘1はお花さん、エトワールは美々杏里さんだった。『ラヴィール』のときは二番手にタータンさんがいた頃で、娘1は月影瞳さん、エトワールは紺野まひるさんというのだから、今の人たちにとってはもはや大昔の話だろう。それから13年。あの人も、あの人も、中村作品に出ないまま退団してしまったのかと思うと残念でならない。