二十歳の思い

 山口百恵は、私の最初のアイドルだった。先日入手した映像資料の中には、二十歳のときに「スター千一夜」という番組の中で進行役の志垣太郎の問いかけにこたえた場面が含まれていた。彼女はこのように話している。

 そうですね、やっぱりあの、あたし…、すごく…、なんて言うんだろう、きざな言い方かも知れないけど、人生とかね、自分がその、生きている中でのいろんなできごとを、ひとつひとつ大切にしていきたいなって思い始めたんですよね。それが、もしかしたら、こう…、まあ、一応、みなさんがおっしゃる、その「勉強」っていうものになるんじゃないかっていう気がして。だから「見聞」ってものを大切にして、それで、自分自身の歌とかお芝居の中にそういうものを活かしていきたいと思うようになりました。

 しっかりした二十歳だ。ことばの端々から、50年代・60年代の邦画に登場するような女性の匂いも感じられ、なんとも小気味がよい。
 優れていると思うのは、その内容もさることながら、話していることばがきちんとした文になっているということだ。考えながら話しているので余分なことばも多いけれど、それらを取り除けばそのまま原稿用紙に書き入れてもよいような構造になっている。
 なお、カギ括弧は私が施してみたわけだが、ここは彼女が話し方の抑揚を違えている部分だ。それが、なんともカギで括らずにはいられないような話しぶりなのだ。
 いずれにしても、こんな風に話してくれるのならば、いわゆる「テープ起こし」も手際よく進められることだろう。ありがたいことだし、見習いたいものだと思う。