みがきみがきて おのがじし

 かつての勤務先の同窓会報が届く。在職当時、事務次長を務めておられたN氏が昨年の暮れに還浄されたとの報せにことばを失う。私がこの学校を離れたあと、事務長に昇格され、同時に学園の理事にもなっておられたが、62歳の若さであった。
 ひとことで言うならば、N氏は「正義」の人であった。しかもそれは、教条化し硬直化し絶対化した正義ではなかった。学園のネットワーク化に関する仕事を受け持っていたとき、職場内、特に教員関係を支配していた秘密主義と排他主義の中で孤立した私を支えてくれたのはN氏だった。
 その職場を離れ新しい生活を始めたあと、ひょんなことからお目にかかったとき、私の様子をご覧になり、当時の私に巣くっていた病理に気付いてくださったのもN氏だった。信頼できるお医者さんを紹介してくださり、それが快方に向かうことを喜んでもくださったのだった。
 ご自身もお身体の具合が優れないままに、学園の経営のため、まさに身を粉にして奮闘された。一歩も二歩も先を見る抜群の経営センスと、「恩義」ということばに象徴される頑ななまでに古風な感性の、両方をしっかりと具えた方であった。
 私の身辺の変化にともない、お目にかかることもなくなってしまったが、私のこころの中にはいつでもN氏がいた。そしてそれは、今もこの先も決して変わることがない。声にならぬことばで、届くことのないことばで、ひたすらに感謝の思いをお伝えしたい。
 ただただ憶念せよ。願いを生き方に変えよ。常にN氏とともにあれ。南無阿弥陀仏。