そしてスペインのアマポーラ

 月曜日の仕事がなくなってしまい「失業状態」なのだが、その分、事務仕事を片付けることもできるし、いくらか時間や手間のかかる仕事もある程度こなすことができた。苦しいには苦しいが、まあ、こういうのもいいかなという気分だ。
 宙組の次の主演男役は凰稀かなめさん、主演娘役は実咲凜音さんに決まった。実咲さんは花組から組替え。
 凰稀さんと言えば、2005年の『霧のミラノ』新人公演で初めて主役を演じたことが思い出される。相手役は去年退団した晴華みどりさんで、初々しくも存在感のあるコンビだった。二人で歌う『アマポーラの詩』の歌詞に「フランスではコクリコ/英語でポピー/中国では虞美人草/そしてスペインのアマポーラ」という一節があったのを印象深く覚えている。晴華さんの歌が上手すぎて、絶妙の不均衡とでも呼ぶべきものが舞台を支配していたことも懐かしい。
 このとき、凰稀さんは86期で研6、晴華さんは87期だから研5だった。新公のときはそのようなコンビを組むのだが、今度、研13でトップになる凰稀さんの相手になる実咲さんは95期の研4だ。現在の宝塚では当たり前のようになっているけれど、こういう年の差、あるいは早め早めの娘役の抜擢というのは本当に必要なものなのだろうか。実咲さんは娘1になる人だと思っていたし、個人的にとやかく言うつもりはまっくないのだが、劇団の姿勢として長い目で娘役を育てる気などまるでないのだろうと感じられてならないのだ。
 OSKではトップを固定していないが、主演級の娘役はもう30歳台になっている。それはつまり、ちょうど今の晴華さんくらいの年頃、あるいはもう少し上ということだ。経験を重ねてようやく演じられるものというものもあると思うし、若い子が見たいのであれば他にもいろいろな選択肢があるわけだ。こんなことをたびたび書いてはいるけれど、心の底から本当にそう思っているから、結果として何度でも書くことになる。
 それにしたって、もう87期から娘1が出ることはないのだろうなどと思うと、あの若い頃の持ち上げられ方は何だったのかと、今さらながら悲しいような腹立たしいような気持ちになってしまう。投票やジャンケンで真ん中に立つ子を選ぶのをよいことだとは決して思わないが、それはそれで私たちのモヤモヤを解消してくれることになるのではと思ってみたりもする。