Endless Dream

 某ネットオークションで『OSK FACE 2002』を入手。これは『宝塚おとめ』のようなものだが、連名表の他にも、公演の記録、スターのインタビュー、座談会などの記事が掲載されているので薄い割りに読みごたえがある。
 この号は「創立80周年記念号」と銘打っており、過去10年の公演年表も収録されている。このように、10年刻みくらいできちんとした記録を残しておくと大きな節目に慌てずに済む。そういう、地味だがまことに大切な仕事のできる人が組織内にいたのだから、実にたいしたものだと思う。
 ところが、この『FACE』の出された2か月後には、スポンサーであった近畿日本鉄道が支援の打ち切りを発表し、劇団は80周年の記念すべき年に解散に追い込まれてしまったのである。折り込まれている扉のページを開くと、そこには全団員が勢揃いした記念写真と「創立80周年記念ソング」が載っているが、どれもこれも空しいばかりだ。
 アリとキリギリスの話をここに書くのは3度目になるが、キリギリスを放蕩や怠惰の見本として餓死させてよかったのかという疑問がどうしても払拭できないのである。彼は、働く人々を自分の音楽で慰め励ますという社会的な「はたらき」を担っていたのではなかったのか。
 歌い踊ることが仕事として成立する世の中をこそ維持したいと思う。OSKはその後、劇団員とファンによる「市民劇団」として再出発し、さらなる紆余曲折のうちに10年の歩みを重ね今日を迎えている。その道が、バブルやマネーゲームに踊らされる人々によって再び閉ざされることのないよう心から願う。