思いがけず娘役を語る

 雪組の娘役、涼花リサ(86期)と華吹乃愛(93期)が1月26日に退団を発表。最後の舞台は5月27日、東宝の千秋楽となる。
 副組長の麻樹ゆめみ(84期)をはじめ、舞咲りん(85期)、花帆杏奈(同)、涼花リサ、晴華みどり(87期)、早花まこ(88期)と「実力派」の娘役の揃っていた雪組。どうだろう、この《漢字+仮名》の名前の数々は。昨年の秋に晴華みどりさんが卒業し悲嘆に暮れた私だが、今度は涼花リサさんを見送ることになった。
 涼花さんは、やわらかなラインが魅力的な娘役のひとりで、いわゆる「路線」に乗った人ではなかったが、常に脇を固める貴重な役どころをこなしていた。新公はヒロイン経験こそなかったものの、役付きで舞台に立つこと8回。バウでは研6のときにヒロインを演じている。最近の舞台では、『ROYAL STRAIGHT FLUSH!!』でエリザベス・テーラーに扮した姿が印象的だった。
 卒業まで4か月。その日まで、そしてその先も、幸福な日々を過ごされることを願う。退団公演となる『ドン・カルロス/Shining Rhythm!』は、タイミングが合えば大劇場を訪れてみようか。
 夜遅く、録画してあったスカイ・ステージのオリジナル番組『ミル!シル!のえる』を見る。未沙のえるさんが毎回1人ずつ若手をゲストとして迎えておしゃべりするというほのぼのとした内容で、初回放送は2009年とのこと。
 最終回のゲストは早花まこさん。ゲストは手みやげに菓子を持参することになっているが、彼女の選んだのは尾山台にある「AU BON VIEUX TEMPS(オーボンビュータン)」 の元祖バームクーヘン「ガトーピレネー」だった。このあたりから「お嬢さま」の匂いを感じ始めるわけだが、小学校時代の写真として示した1枚は某有名女子校の制服姿。なるほど、本物なのね。
 3代に渡る宝塚のファンで、最初に見たのは大地真央の舞台だというから、その意味でも本物。物腰の柔らかさに加え、ことばの端々から感じられる品の良さに、見ているこちらが戸惑うほどだったが、音楽学校時代から大切にしているというノートからは、舞台をつくることへの思いがほとばしるようであった。
 この人のスタンスは、例えば、舞台にかける思いを熱く熱く語る晴華みどりさんなどとは大きく異なり、好対照をなしているとも言える。しかし、宝塚を愛するという一点においては異なるところはまったくない。
 どちらがよいとか優れているとかいう問題ではない。どちらも大切で、どちらも必要なのである。ただひとつの表現形が求められるのではなく、ひとりひとりがそれぞれの思いのままに関わり合っていけるところに、舞台をつくるということの本質があるのだろうと思う。