舞台と客席の間、ふたたび

 高尾で2クラスの試験を終えて新宿。西口のSPACE107で「ROUGE 新春レビューショー」を観る。
 2時間弱のステージは、大きく「新感覚ミュージカル」と「レビューショー」の2部構成になっている。詰めたいものを詰めたいだけ詰め込んだといったおもむきで、実に楽しかった。このところ、全体に一皮むけたような、突き抜けたような感じがするのは、昨年秋の連続公演が契機となっているのであろう。
 気になるのは客席である。あれほど多数の「客席降り」を前提とするならば、客席の前方をこそきちんとした座席にすべきかと思う。もちろん、座席の配置は劇場の問題であり、すぐには解決しないことではあるが、どうにかならないものかと思うのだ。すし詰めになっている感じも決して悪くはないのだが、通路に脚を出すような客もいるわけで、演者にはなんとも気の毒なことだ。
 もうひとつ客席で気になるのは、演者に対して頻繁に掛けられる声である。舞台と客席が一体になるというのはよいけれど、セリフや歌詞が聴き取れなくなったり、進行の妨げになったりするようでは困る。また、デュエットの際に一方の名前だけを呼んだり、群舞の際に特定の演者だけに声をかけたりするのは、舞台鑑賞のマナーに照らして大きな問題だと思う。
 このようなことを思うのは、開演前に「掛け声」の禁止をアナウンスする宝塚のような舞台に染まってしまったからなのだろうか。あるいは、演ずる者と観る者との距離にずっと戸惑い続けているからなのだろうか。しかし、「成田屋」「音羽屋」とひっきりなしに大向こうから声の掛かる歌舞伎がないように、ROUGEもまたマナー違反の掛け声で彩られてはならないと思うのだ。
 演者はみな、口々に歌と踊りに精進すると言う。ならば、観客もまた「文化祭気分」や「身内意識」から抜け出し、舞台と客席との間に緊張感を生み出そうという意識を持たねばならない。それこそが、本当の意味で「舞台と客席が一体になる」ということなのだと信じたい。