Y, Y, Y!

 仕事帰りに東宝。宙組の『クラシコ・イタリアーノ:最高の男の仕立て方』と『NICE GUY!!:その男、Yによる法則』を見る。微塵の後悔もないとは言え雪組でずいぶん散財してしまったので、今日はオペラグラスを手にB席に着くことにした。
 芝居は、すべてが想定の範囲内で展開していくようなわかりやすい「人情話」ではあるのだが、物語の舞台であるイタリアの風景を思わせるカラッとした明るさに貫かれている。その明るさのうちにホロリとさせてしまうのだから、きちんと閉じた物語の力が発揮されているのだ。
 ショーは、見事なまでの「トップ押し」に終始している。タイトルに「Y」、主題歌にも「Y、Y、Y」、手にしたシャンシャンも「Y」、さらにトリプルダンスまで組み込まれているのだから、これが「退団公演」として企画されたのだとの噂がたっても仕方がない。しかし、そのような経緯は置いておいて、とにかくかっこいいし華やかなのだ。
 芝居もショーも、大空祐飛の魅力爆発と言ったところである。「さしすせそ」と「たちつてと」がどうしても気になってしまうこともあって、実際あまり興味のない人だったのではあるが、「見ればはまる」ということが本当にあるのだと実感した。
 娘1の野々すみ花もよい。今日は独特のよい声が出切らずに気の毒だったが、芝居では田舎娘の成長していくさまをコミカルに演じていた。ショーでは、デュエットダンスの際に大階段をものすごい勢いで駆け降りる姿を見てちょっとクラクラ。
 北翔海莉と凰稀かなめも好演。先日、スカイ・ステージで2005年の雪組新人公演『霧のミラノ』を見たが、これで晴華みどりとともに初めての主役を務めたのが凰稀かなめだった。タータンさんを思い出させる独特の声は変わらず。歌もずいぶん安定してきており、おじさんはホッとした。
 ショーでは美穂圭子さんが出突っ張りの様相で、やはり「歌姫」はこうでなければという見本のような扱いだった。ただ、もっと若い人たちがソロで歌う機会をもらってもよいのではと感じてしまったのは事実。それにつけても思い出すのは『仮面の男』の大女優である。役者が撒かなくても降ってくる紙吹雪を見たとき、あのミラーボールの衝撃がまたよみがえってきた。
 研6で初めてエトワールに抜擢されたのは百千糸。見事だった。この人も「歌うま」のひとりなのだが、歌が上手いということが路線を外れるということと同義になってしまっている昨今の状況をなんとか打ち破ってもらいたいものだと思う。
 そして、美影凜。この舞台は彼女の退団公演となる。見納めと思えばこそ足を運んでみたのだった。彼女をめぐるあれこれについては、明日にでも書こうと思う。