クルマ談義

 上野原での授業を終えたとき、1人の学生がマルチメディア教室の調整卓までやってきた。クルマ好きで知られる彼だ。お金を貯めて中古車を買ったので見てくれないかという。
 マツダ車好きで知られる彼の選んだ1台は「ランティス」の5ドアハッチバッククーペだった。ポルシェのスタッフによってデザインされたこのクルマは日本国内では1993年から1997年にかけて販売され、およそ4万台あまりをどうにか売ったという。私の乗っている「レビュー」は1990年から1998年までが販売期間で、やはりまるで売れなかった1台。ちょうど同じ時代に世に出され、運命をともにしたクルマである。
 この頃のマツダは、販売チャンネルを1つから4つに増やせばクルマも4倍売れるようになるなどという子どもが考えても無理だとわかるような理屈をこねまわしており、まさに「バブル」の絶頂期にあった。ランティスもレビューも、そんな時代に振り回された「徒花」のようなところがあって、もう少し大切に売ってくれていればとも思うのだが、そういうレアな存在ゆえにマニアの心をくすぐる部分もある。
 彼のクルマは美しい黄色に塗りなおされており、エンジンもノーマル車よりサイズを落として元気のよい仕上がりになっていた。クルマ談義はとどまるところを知らず、ふと気付くと空もうっすらと暗くなりかける頃。今度はランティスとレビューを並べて記念写真を撮りましょうなどと言われ、しばらく洗車していないことに気づいた私だった。