遅筆堂

 夜、紀伊國屋サザンシアターで、井上ひさし作・栗山民也演出のこまつ座公演「キネマの天地」を見る。いつもながら、K君にはお世話になった。感謝。
 達者な役者さんが揃っているが、そのひとりである麻実れいさんはかつての宝塚雪組のトップスター。若いし大きいというのが率直な感想だ。ベテラン女優の役を好演していたが、カーテンコールのあと舞台袖に引き返すときの歩き方は男役の姿そのままで、そんなことが微笑ましくもあった。
 昨年の春に井上ひさしさんがお浄土に還られ、その後、あちこちの舞台で彼の本がかかるようになっている。あらためて観劇の機会を得て、そこに希有の才能と比類なき努力のあったことを思う。そりゃ筆も遅れるわなと、そんな気分だ。