縦縞人生

 第3水曜日。国会図書館は「資料整理休館日」である。せっかく「調べものモード」になっているのだからと、もうひとつの調べもののため野球体育博物館の図書室に出向いた。
 今日ほど「虎ファン」に生まれてよかったと思ったことはなかった。球団が1991年に発行した『阪神タイガース昭和のあゆみ』が、私の「調べもの」に大きなヒントを与えてくれたのである。阪神ファンでなければ開いてみなかったかも知れないものね。
 この書物は「本編」「資料編」「プロ野球前史」の3冊からなっており、「本編」の大半と「プロ野球前史」は同盟通信社やデイリースポーツ社で筆を奮った石崎龍氏の絶筆である。一貫して冷静な筆致だが、鈴木龍二の回顧録に適切な批判も加えているところなど、何とも小気味がよい。
 一点、特に興味深く読んだところがある。戦前最後の職業野球の「仕合」は一般には1944年9月の「総進軍優勝大会」とされているが、翌年の元日から阪神、産業(もとの名古屋)、阪急、朝日(もとの大東京・ライオン)の選手たちによって甲子園球場と西宮球場を会場に「正月大会」が開催されたというのだ。今やウィキペディアにも載っていることではあるが、この事実を掘り起こして球団史に書き込んだことに敬服する。別冊となっている「プロ野球前史」とあわせ、単なる球団史の枠を越えた立派な著作だと思う。
 そうそう、この図書室の司書さんは実に優れた人である。調べものというものは、進めるにしたがって次の資料が欲しくなるものだが、この人は請求する前に欲しいものを持って来てくれるのだ。驚くやらうれしいやら。
 で、私はいったい何をしてきたのか。ここには書かなかった一連の調べものを「本」にすることができないかと思ってはいるのだが、さてさて。