新日本創作少年少女文学

 西洋の書道がそんなに流行っているのかと思ったら「カリグラフィー」じゃなくて「借りぐらし」だったよ。でも、同じようなことを思ったのは私だけではなくて、ネットの世界には何人もいるらしい。
 例の映画の原作は、英国の児童文学者 Mary Norton(1903-1992)の The Borrowers という作品だそうで、日本では『床下の小人たち』の題で林容吉によって翻訳され、岩波少年文庫にも収められている。ということは、「借りぐらし」というのは原題に忠実とも言えるわけか。
 児童文学と言えば、この7月3日に後藤竜二さんが亡くなった。ポプラ社の「1ねん1くみ1ばん」シリーズや講談社の「キャプテンはつらいぜ」シリーズで知られた人だが、私が懐かしく思い出すのは以下のような作品だ。

  • 『地平線の五人兄弟』
  • 『ボタ山は燃えている』
  • 『歌はみんなでうたう歌』

 これらはいずれも新日本出版社の「新日本創作少年少女文学シリーズ」の作品で、小学校の図書館に置かれていたものだ。小学校の高学年には時間割に「読書」の時間があり、図書館へ行ってはこのシリーズの本ばかり選んで読んでいた。後藤竜二以外では次のような作品があげられる。

  • 『鯉のいる村』岩崎京子
  • 『スカーフは青だ』山口勇子
  • 『立ってみなさい 』斎藤隆介
  • 『空気がなくなる日』岩倉政治
  • 『あしたへげんまん』竹田まゆみ
  • 『赤毛のブン屋の仲間たち』赤木由子
  • 『ぼくらは機関車太陽号』古田足日

 図書館に新日本出版社の本がたくさん置かれている学校で育った私には、それらが新日本の本であるとよく理解して読んでいたところがある。文字通り、新しい日本が生まれるのではないかという大きな期待の中に生み出された作品の数々。その時代のムードの中に、私は多感な少年期を過ごしたのである。