ねがい

 昼、先日亡くなったK氏のご母堂のご葬儀のため、西落合の自性院へ。長く日本舞踊の指導にあたられ32人の名取を育てられた方とあって、多くのお弟子さんが参列された。
 この1月に初めてお目にかかった方ではあったが、お孫さんの勉強のためにお訪ねするたびに親しくお話しくださった。ご自宅の一室は大きな板の間になっており、大きな鏡が備え付けられていて、そこでお稽古ができるようになっていた。そのお稽古場に通していただいて、あれこれの話をさせていただいたことをつい昨日のことのように思い出す。明るく華やかで、シャンとして嫌味のない、まことに粋な方であった。幾重にも重なったご縁のうちに出遇えたからこその別れを思う。合掌。
 少し遅れて会の研究例会へ。発表は2本。手堅い研究手法と発表の手際のよさにうなる思いがした。いずれもハンドアウトを用いたオーソドックスな形態だったが、発表の良し悪しとプレゼンテーションソフトの有無には相関のないことを思い知らされた。
 質疑の時間にも懇親の場でも、伊藤先生のことが話題にのぼる。そして、大きな仕事を残され、また道半ばにしてお浄土に還られた幾人もの方のことも。手花火忌。夏薊忌。私たちに先立っていのちの事実を教えてくださった人々のご命日が続く。夏は、それらの人々の願いとともにあることを確かめる季節だ。