低い高い高い

 百貨店「松屋浅草」の屋上にある遊園地が昨日をもって営業を終了したという。松屋浅草は1931(昭和6)年の開業というから老舗ではあるけれど、このところは振るわず、2月末に建物の4階から6階を閉じたのに続き、今回、7階のレストラン街と屋上遊園地の営業を終えたのとのこと。
 亡くなった父は同じ松屋でも銀座の方が好みだったようで浅草店にはあまり出かけなかったが、それでも何度かは連れて行ってもらった覚えがある。東武電車が2階に出入りする建物は「ターミナルビル」の走り。構造上の限界があり東武の長編成化に対応できていないのが残念だが、この浅草駅は東京には珍しい終端駅の風情を持った駅である。
 さて、松屋の話。いつか書かなければと思っていたのだが、百貨店の松屋と牛めしの松屋は、文字にすれば同じだが、口に出すときにはアクセントが異なるのである。
 百貨店の方は「おとな(大人)」とか「あだな(渾名)」と同じで、2音目以降が高くなる。いわゆる「平板式」で、後続の助詞で下がることはない。つまりは《LHH》。
 一方、牛めしの方は「たまご(卵)」とか「あなた(貴方)」と同じで、2音目だけが高くなる「起伏式」のうちの「中高型」である。こちらは《LHL》。
 どちらでもよいではないかとか、所詮は狭い地域に共通の了解が成り立っているだけではないかという議論もあるとは思うけれど、申し訳ないが、こればっかりはきちんとしてもらえないとどうにも気持ちが悪いのである。
 こういうおっさんたちがいるものだから、アナウンサーのみなさんもご苦労なことだと思う。ちなみに、今朝少しだけ見たテレビでは堂真理子さんがきちんと言えていることだけは確認できた。彼女は東京の人のようだから、知らず知らずのうちに身に付けていたのかも知れない。
 アクセント辞典に載っていないことばのアクセントというのは実に悩ましいものだ。広島には「福屋」という百貨店があるが、これは「中高型」ではなく、「からす(烏)」や「もみじ(紅葉)」と同じ「頭高型」のように聴き取っているのだがどうだろう。つまりは《HLL》。ネイティブライクに話したいといくら思っていても、こういうところでうっかりばれてしまうものだから気になる。
 ところで、私は「松屋銀座」と言う場合、「銀座」の部分は「頭高型」だと認識しているのだが、それでよいだろうか。こちらの百貨店に関わりの深いK先生もそうおっしゃっていたからオッケーかな。つまりは《LHHHLL》。空にかかる虹のようなアクセントだ。