静謐と騒擾

 遅く起きて、無料招待券をもらった京都タワーへ。小さい頃に上ったことはあるのかも知れないが、まるで記憶がない。ほとんど初体験の展望台で、まさにお上りさんの気分。
 近鉄百貨店(かつての「丸物」)の跡が更地になったのでお東さんがずいぶんよく見えるのだが、工事用の素屋根を阿弥陀堂にスライドさせたため御修復を終えた御影堂を目にすることはかなわない。でも、このような風景が見られるのも限られた間と思い写真に収める。
 タワーを降りてからお参りに。奉仕団で上山していた女子高生の大群とすれ違うと、何人もが「こんにちは」と声をかけてくれる。略肩衣をかけていたからかしら。普段からきちんとあいさつのできる人たちなのだろうか。ちょっとうれしい気分。いいぞ、I女子高校。
 阿弥陀堂の静けさの中、須彌壇収骨に来られた門徒さんの後ろに座ってお参りを済ませ、お白州に出ると、先の女子高生たちがキャッキャと記念写真を撮っている。静謐と騒擾。ちょっと大げさか。しかし、この絶妙の対比のうちにいのちの事実があり、それが具現される場をこそ僕たちは相続しようとしている。
 帰りに使った新幹線は「ひかり」。隣に座った小柄な若い女性は、いったいどれほどの量のものを食べたのだろう。見るともなく気付いただけで、弁当が4つ、アイスクリームが2つ、ジュースが3本、ラスクとおぼしきものが1袋。そのほか、おにぎりやら餅菓子やらをいくつか。
 ものすごい勢いで食べ続けているかと思うと、車内販売のお嬢さんから新しい食料を購入。合間にデッキに出て電話連絡も取っているようだった。取材中の紀行ライターだろうか。ならばメモくらいするだろうし。あるいは次のイベントに備えたフードファイターか。過食に悩んでいる人ならば、気の毒にも思えるが。
 そんなこんなで、弁当の美味しそうな匂いに負けた私は、東京駅で降りると行きに食べなかった「深川めし」を買い求めたのである。それも、ジェイアール東海パッセンジャーズ(JRCP)のものと、日本レストランエンタープライズ(NRE大増)のものと1つずつ。前から食べ比べてみたかったのだ。さすがにひとりで2つは多いので、帰って家族の協力のもとに完食。JRCP対NRE。勝負の行方はひそかに胸の内に。