蝉時雨はるか

 所属寺へ。お墓参りを済ませたあと、11時からの「平和を願う法要」に出る。正午には、蝉時雨だけが聞こえる静かな本堂で黙祷。
 法話の最中、本堂に迷い込んできた1匹のセミが、外陣の天井に吊された照明に入って出られなくなってしまった。法要のあと、そのセミを救い出すことはできないかとあれこれ算段するが、やむなく断念することに。
 1匹のセミのいのちを救おうとするのも人間ならば、戦争の名のもとに多くの人間のいのちを奪ってしまうのも人間である。戦争の時代に生まれていたらお国のために死んでくると言えたのだろうかと本気で悩むのも自分ならば、その晩に飲んだくれてマイクを握っているのも自分なのである。